在日コリアンの感動の結婚式
ブライダルプロデューサーとして仕事を始めて今年で15年になります。
仕事としての結婚式は、日々見届けていますが
結婚適齢期(?という表現はどうかな・・・?)をと~っくに過ぎて
しまった昨今は友達の結婚式に招待されることもトントなくなりました。
昨年久しぶりに、友人から結婚式の招待状をいただきました。
とても☆格好いい☆ハングル語での招待状です。
(当然、私は、ハングル語は読めませんので、知り合いの在日の方に
訳してもらいました。やっぱり・・・モチロン結婚式の招待状でした(^_-))
彼(私の友人)の日頃の言動から
『民族主義』を重んじるポリシーは十分に知っています。
ハングル語の招待文、コリアンらしいデザイン、
・・・一見して「彼らしい」と感じました。
彼の交友関係を見渡すとおそらく招待客のほとんどが
在日コリアンの方だろうと推測できます。
きっと『民族魂』あふれる結婚式だろう・・・!!
「しかと見届けたい!コリアンウエディングを」
ブライダルプロデューサーの血が騒ぎました。
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私は日本人として和服で臨みました。
(ちょっとキンチョ~^^しています)
和服は、100名以上の出席者のなかで私一人だけでした。
女性の出席者の皆さんは、華やかな韓服(チョゴリ)をお召しになっています。
和服同様に、チョゴリも伝統的なデザインのものから、今風のデザインまで、
あるんですね。色使いなどがとても個性的なものも見かけました。
これだけそろうと、圧巻です(^o^)vv
男性の出席者の皆さんは、スーツでした。
花嫁のお父様だけは、男性用の韓服(チョゴリ)でした。
男性の出席者の皆さんは、スーツでした。
花嫁のお父様だけは、男性用の韓服(チョゴリ)でした。
会場コーディネイトは、一般的な結婚式仕様でした。
だけど・・・やっぱり、『コリアンウエディング』
BGMに朝鮮民謡が流れています!! ワクワク♪です。
BGMに朝鮮民謡が流れています!! ワクワク♪です。
在日コリアンの方の一般的な結婚式は、大規模だとうかがっていましたが、
今回は110名くらいです。(800名くらいの規模も珍しくないそうです。)
大人数で席順も決めずに、当日飛び入り出席も受け入れられる・・・
『コリアンウエディング』は大らかなスタイルだともうかがっていましたが、
来賓~職場関係~友人~親族などと、よく見られる形式で配席されて
いました。
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じゃじゃ~ん♪
開宴前にすでに
各ゲストの卓上には キムチ 蒸豚 お餅 が並んでいます。
各ゲストの卓上には キムチ 蒸豚 お餅 が並んでいます。
隣の席の在日コリアンの方にうかがったのですが
キムチやお餅は、主催者である両家の自慢の品を
結婚式場に持ち込むのだそうです。
その家流、その家に代々伝わる味こそ、"最高のおもてなし"なんですね。
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知り合いがまったくいなくてどうしよう(^_^;)と思っていたのですが、
新郎である友人が私の配席を考慮してくれていました。
私の右隣には、在日コリアンの女の子(独身・33歳)、
左隣には、韓国から一橋大学に留学中の女の子(既婚・30歳)
でした。
どちらも初めてお会いした方でしたが、
世代も近く仲良く、気さくにお話しさせてもらいました。
世代も近く仲良く、気さくにお話しさせてもらいました。
とても興味深かったのは、お二人は同じ民族なのに、
『結婚』(やその他民族文化)に対して
ぜんぜん異なる考え方でいらっしゃることでした。
在日コリアンの方は、韓国の伝統的な考え方。
「コリアンの純血を死守したい、コリアン同士で結婚すべきだと思っている。
結婚式のスタイルも、チョゴリを着て、朝鮮民謡で、キムチでもてなして、
今日のような、コリアンらしい結婚式がしたい」と。
一方で韓国からの留学生の方は、
現代の日本の若者たちと同じような感覚でした。
現代の日本の若者たちと同じような感覚でした。
「夫は、中国人。
自分たちの結婚式は、中国と韓国と両方で行った。
どちらもコンパクトなスタイルで、伝統的な儀式はほとんど取り入れなかった。
みんな欧米風に憧れているし、
これほど(この結婚式)韓国的な結婚式は、
本国の友人の結婚式ですら見たことがない。」と。
結婚式の司会者は、ハングル語を話します。
時々、日本語で通訳してくれますが、
すべてを通訳していないようなので様子が分からない場面がありました。
すべてを通訳していないようなので様子が分からない場面がありました。
そんな際には、
私の左隣の韓国人留学生が、私にこっそり通訳してくれます(^_-)
私の左隣の韓国人留学生が、私にこっそり通訳してくれます(^_-)
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きれいなチョゴリスタイルのウエディングドレスです。
いや、ウエディングドレス風の韓服チョゴリですね。
左隣の韓国人留学生の子に訊ねると
「本国では、こういうチョゴリは見たことがない」とのこと。
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そこで、私なりに
チョゴリのウエディング事情を調べてみました。
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華やかなチョゴリですが
本国でも日常着としては影を潜めているそうです。
結婚式などの式典では伝統衣装を着用するカップルも多いとか。
結婚式用のチョゴリは
伝統的な色合いと素材のものだけでなく、
西洋のウェディングドレスに影響を受けた
純白・レース素材等のものも人気なのだとか。
また、特に近代以降の肩ひものついたチマ(スカートの部分)の形が
ウエディングドレスのように着用しても違和感が少ないから、
チョゴリ(上着部分)が薄く透ける素材で作られたもの、
チマが複数枚の布で出来たものもあるそう。
髪型や装身具についても伝統的な型のものだけでなく、
現代風のヘアアップスタイルや
ティアラ等を着用するなど、
時代・流行に応じた様々なコーディネートや
アレンジを加えながら着用されているそう。
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ナルホド☆ ナルホド☆
韓服チョゴリも和服の事情と似ていますね。
伝統を受け継ぎながら、現代人に似合うスタイル
アレンジするのは、必要なのかもしれません。
↑ちなみに・・・。和服の現代アレンジ版です。
打掛と綿帽子がオーガンジー素材のもの。
ヘアも鬘(かつら)を付けずに、自分の髪で洋風に結います。
伝統美に近代アレンジをコーディネイトしたスタイルです。
「史跡 高松城」での結婚式でしたが、
脈々と続く歴史の中に、『今』がきちんと存在していること
を感じるものでした。
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さて、コリアンウエディングに話題を戻します。
お色直し後にはウエディングケーキの入刀です♪
お色直し後も花嫁さんの衣装は、韓服チョゴリです。
お色直し後のチョゴリは、色使いもデザインも伝統的なもの。
ヘアスタイルは、洋風アレンジですね。
チョゴリのローズカラーと、
ヘッドブーケのお花のカラーを揃えてあるんですね(^_-)
花嫁さんらしい、上品なアレンジで、好感が持てます。
新郎は、タキシードでした。
(個人的に、彼にもチョゴリを着てほしかった(^_-)・・・)
結婚式の終盤は、朝鮮民謡に合わせて、
出席者が会場に大きな輪を作っておどります。
家族も親族も、友人も来賓も、みんなが手をつないで
一つの大きな輪になって踊ります。
ハングル語はよくわかりませんでしたが、
「祖国の統一」や「民族の誇り」などを
謳っていらっしゃるようでした。
私は「踊りもわかんないし~」と、ちょっと戸惑っていましたが
思い切って、和服姿で飛び込んでみました。
言葉ではうまく言い表せませんが、
『一体感』を感じるんです。
皆さんが楽しく踊っていらっしゃる中に自分も一緒にいれて
次第に涙が出てきました。
子どもの頃はお遊戯や整列などでお友達と手をつなぐことが
頻繁にありましたが、
おとなになると人と手をつなぐことってなかなかないですよね。
良いもんです。
「私、ここにいる!」 「みんなと一緒にここにいる!」
って素直にうれしいものです。
『絆ウエディング』など、
最近、ブライダル業界では多用されますが、
本当の『絆』って、こういうことにあるんだと思います。
結婚式の締めくくりは、ご両家からの謝辞です。
私の友人の新郎さんは、
ハングル語に日本語を交えながら立派にご挨拶されました。
新郎の謝辞の中で印象的だったのは
「日本で生まれたコリアンで、学生時代はアメリカにいたから
自分が今、何語を話せばいいのか分からなくなることがある。
だけど、
祖国の統一を願い、コリアン民族としての魂を大切にしながら
日本で生活できることを、誇りに思う。
同胞の方も日本の方も、仲良くしてください。」
といったご挨拶に感動しました。
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翌日、新郎にお礼の電話をしました。
「本当にいい結婚式だったよ~。
人工的に用意された感動場面はみじんもなく、
民族の絆こそ、感動につながった。
日頃から、民族アイデンティティーを大切にしている
"あなたらしい"、まさにオリジナリティあふれる
素晴らしい結婚式でした。
一方で私たち日本人は
儀式や文化の中に
民族アイデンティティを保守できているかと思うと
切なくもなったんだ。」
そう、私が伝えると、彼はこう答えてくれました。
「祖国から離れているからこそ
一層に、祖国をいとおしく思い、
民族の血を大切にしたいと思うだけ。
日本に住んでいる日本人だから
日頃から民族アイデンティティや
日本の文化が溢れる生活を送っているんだよ。
だから改めて考える機会がないだけだよ。
幸せの中にいると幸せに気付かないのと同じ。」
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ブライダルプロデューサーとして仕事を始めて今年で15年になります。
今、まさに強く思っているのは、
『結婚式』という人生最大の儀式の瞬間にこそ、
民族のアイデンティティや
民族が大切に守ってきた文化について
つまり
自分たちの"ルーツ"について
考えるべきじゃないかな・・・と。
先人たちがきちんと守ってくれてきた伝統を
次の時代につなげるのは
"今"を生きる私たちの使命じゃないかと思います。
時代に応じてアレンジや変化も必要でしょう。
ただただ、カタチを死守することが
伝統を守ることではないとも思います。
民族伝統に裏打ちされた
「儀式」や「文化」は確立された形式美です。
だからこそ美しいものです。
ブライダルプロデューサーとして
未来においても
民族が誇れる儀式や文化を
引き継いでいきたいと思っています。
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オリジナルウエディングは
「らしさ」です。
「らしさ」の表現は、
自分が何者なのか?
自分のルーツをしらなきゃ始まらない・・・。
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